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2013.09/11(Wed)

20130911 『巡ル結魂者』感想 

『巡ル結魂者(リンカ)』を読んだので感想メモ。

どらが敬愛してやまない魔術士オーフェンシリーズの作者、秋田禎信先生の新作ラノベシリーズ。
講談社ラノベ文庫からの発刊で、ある意味久しぶりのラノベ新規長編シリーズになるのだろうか。
ベティ・ザ・キッドは最初から上下巻完結の中編だったし、その前の数年は新規のシリーズものはやってなかったから。
まあリンカがどのくらい続くのか知らないので長編になるのかわからないけど。

普通の高校生男子が異世界に召喚されてそこで何人もの女の子と知り合って、という、定番と言って差し支えないあらすじのお話。
それだけに発売前のファンたちは期待半分不安半分といった感じだった気がする。
良くも悪くも個性が強くてありきたりな直球定番てものが描けない作家だから。
既存の女性キャラもみんな人間味があって一癖も二癖もあるキャラばかりで、「わかりやすい直球な萌えキャラ」ってあんまりいなかった。
ていうかむかし一回書いてたからね、主人公の男以外は女しか出てこないって世界観の話。
その結果、山賊の親分(女性)がナイフで鼻毛切ってたからね。
良くも悪くも普通の「ハーレムもの」みたいのにはならないだろうとは思ってた。

で、実際の本の内容。

主人公の高校生、高城航斗(たかしろかずと)にどこからともなく伸びて寄ってきた白い手。
最初は無視していたが、めげずに寄ってくるその手がいい加減うっとうしく、しっかりと手でつかみかえした瞬間。
奇妙な呪文の詠唱の声とともに視界は暗転し、数秒後にはどことも知れない異世界にいた。
そこは、他の生物と魂を繋ぎその能力や性質を吸収するリンクという技術が発展した世界。
リンク創始者たる大昔の魔法使いメイによって召喚されたものの、メイは肉体を失って霊体となっており航斗以外には知覚できない。
不審者として街の守備隊に拘束されそうになった航斗は、テイカという少女に助けられる。
テイカの口添えで、リンク能力を扱う者リンカたちが学ぶ学園内で保護・監視されることになった航斗は、テイカやその学友の少女ら、そしてメイとともに、元の世界に戻る方法が見つかるまでここで生きていくことになる。

物語の展開としては、はっきり言ってしまえばシリーズ開始一冊目としても地味なほうだと思う。
主人公と他のキャラクターとの会話の中で基本的な世界観の概要が説明されていきながら、主人公がヒロインやその友人たちと知り合い、情報を手に入れつつ状況を把握していく。
終盤になって多少派手なバトル展開はあるが、これもどこかチュートリアル的な感じが漂う。
ネット上で見かけた感想の多くは「まずまずだが次巻以降に期待」といったところ。
これ一冊で完結しているわけでも大きくはっちゃけてるわけでもないので、最初からある程度追いかけるつもりがある人にとってはシリーズの導入として及第点。
しかし完全新規の読者がふらっと表紙買いとかした場合は大満足とはいかないだろうなという感じ。

その一方で、世界観や設定の構築に関して中二病と高二病の間を上手く行き来しながら個性的に組み上げるのが非常に上手い作家なので、何もわからない主人公が周囲のキャラクターたちとの会話の中で手に入れていく様々な情報には興味をそそられる。
一つ設定が示されるたびにそれに付随していくつもの疑問が新たに出てきて、それがこの先少しずつ明らかになっていくのだろうと思うと続きを読むのが楽しみになる。
物語の軸となるリンクや、世界の成り立ちや歴史、架空の生物、単なるならずものではないらしい山賊たちの正体など、さまざまな謎が散りばめられている。
作中の世界ではほぼ日本語同様の言語が使われていて、文字も漢字とカタカナであるなんて設定、どう整合性をつけるのだろうか。
お好み焼きという食べ物が向こうの世界にもあるのだが、その発祥は古代の武術家だった王コノミがロープの上で生活する修行中に作ったとか、異説では王コノミがロープの上で「こんなもんや!」と弟子に叫んだのを「粉物で食事を作れ」と聞き違えたとか、そんなたわけたギャグ混じりに会話は進んでいく。

リンク能力については、「人間が他の生物の力を手に入れる能力」として扱われているので、キャラによってそれぞれ様々な能力を持っていて、個性を活かした能力バトルが展開される。
攻撃を認識していれば絶対無傷のドラゴンリンカや、高い身体能力に神経毒を持つキャットリンカ(魔法によって改造された二本の尾を持つ猫らしい)、遠隔視や麻痺視を持つアイボールリンカなど、架空かつ独自設定の不思議生物の力を手に入れたキャラがたくさん出てくる。
戦略性とハッタリを活かした戦闘描写も作者の持ち味で楽しみ。
主人公の航斗自身は能力を得ていない。
しかし常に行動をともにする魔法使いの霊体メイは、他の生き物の力を借りる通常のリンカたちと違い彼女自身が強大な魔法の力を行使する存在で、メイに頼んで間接的に様々な魔法を引き起こす。
メイはかなり強力なキャラクターなのだが、航斗と離れると力が使えない、強すぎる魔法を使うとしばらく行動不能になるなど万能ではない。
そして航斗はメイを頼れない時でも、彼なりに頭を使って戦闘の役に立つ参謀的なポジションとして参加するので、極端に役立たずとか人頼みといった印象にならないのが良い。

この主人公の性格もなかなかいいかんじで、常に冷静で頭の回転が速く状況への適応力が有る。
異世界に召喚されても、危機敵状況に陥っても、むやみにパニックにならずに自分なりに次善の選択肢を選んで対応していく肝の据わりっぷりは普通の高校生って感じではないが、頼もしい。
頭が切れるのだが次々と出会う変人たちに若干引いたり呆れたりしつつも見下すことがないのが好印象。
やれやれ系で変に冷めたりひねたりしてるキャラは個人的に苦手なもので。
しかし航斗は常識的に普通に良いやつって感じで、今のところ目立った欠点がないのがかえって地味になってるくらい。
まあ性格ぶっ飛び気味のメイとの掛け合いはやや辛辣気味だったり、無自覚?に勉強苦手なテイカに難しい質問あびせかけて半泣きにさせてるところはあるけど。
これから先で周囲のメインキャラとの間の遠慮がなくなっていったりどんどん新しい変人が出てくる中でどう転がっていくかが楽しみです。

周囲のキャラたちはみなそれなりに粒ぞろいに個性を立てている。
メインヒロインのテイカは普通のいい子といった感じで地味ではあるが癒しと落ち着き担当。
航斗と行動をともにするメイはおねーさん風を吹かせすぎておばさん臭さが漂ううざ可愛さ。
主人公やテイカたちの面倒をみるトアコ先生は常に冷静でキビキビとして物の考え方に筋は通ってるんだけど、その筋が一般常識と平行だったりねじれてたりする変人。
テイカのチームメイトの3人もそれぞれ脇を固めている。
テイカに憧れる妹分で主人公に反抗心を持つ落ち着いた喋り方をするアズラ。
猫の力を持つリンカで普段からきまぐれでひとなつこく猫っぽい動きをするエコ。
発明馬鹿で守銭奴で常にハイテンションなボケ担当のハナ。

正直意外だったが、割りとどのキャラも素直に可愛いと感じた。
うっかりすると妙な生々しさをにじませる描写をする作者にしては意識してライトなノリにしてる。
個人的には憧れの先輩を心配して主人公に敵対心を持つアズラと、ふわついてるようでしっかりものなエコが可愛い。
秋田禎信ファンたちはだいたいみんな連想しているようだが、本人はいたって真面目なのに話がぜんぜん噛み合わないトアコと発明馬鹿なハナが魔術士オーフェンのプレ編のコルゴンとコミクロンを思い起こさせる。
人気キャラと同じような属性を持ってるだけにこの二人の言動は見ててくすりとくるものがある。
あとどうでもいいけど東方好きなどらとしては、メインキャラの中で一人だけ挿絵のないハナが発明家の守銭奴ということでにとりで脳内再生される。

ライトなノリといえば狙ったようなお色気シーンなどがところどころに入っていたのは、秋田ファンとして面白かった。
著者の昔の作品だとヒロインに服を脱がせたりみたいな直球のセクシャルアピールってあんまりなかった気がする。
異世界召喚モノという定番なプロットなのも含めて、ラノベレーベルで新規に話を書くにあたり著者なりにあらためて「ラノベっぽいもの」に挑戦してみているのかもしれない。
ラノベというジャンル分けによる固定観念とかをあまり好ましく思わないと言い、デビュー以来良くも悪くも個性の強い作品を書いてきた人なので、定番という枠の中でどこまで暴れられるかも見てみたい気がする。
カナスピカとか見る限りは尖ったネタに頼らなくても十分に面白いもの作れる人だから。
そういえば著者の変化といえば、お色気とは違うシモネタ的な笑いも昔に比べて増えてきたのはなんだろう。
メイがおっぱいやおしり系のギャグに躊躇ない感じはおばさんくさいが、著者も歳をとってきたのと関係あるだろうか。
少なくとも照れはなくなってきてる気がする。

巡ル結魂者、キャラも雰囲気もけっこう好みな感じなので、これから先の展開に期待。
シャンクみたいな感じで、短すぎず長すぎずすっきりまとまってくれたら嬉しいな。
願わくば、既存の秋田ファン以外の新規の読者さんも増えたら喜ばしい。
応援していきたいと思います。
そして来月のオーフェン第四部の新刊も楽しみ。
これから先もがんばってください、秋田先生!
【編集】 |  14:47 |  漫画とか小説とか感想とか  | TB(0)  | Top↑

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